
心不全
心不全
当院では、心不全管理を積極的に行っています。
心不全と聞いて、その名前を理解している方はとても少ないと思います。実際、私が心不全の方を診療する時には、「心不全の状態ですね。ところで、心不全ってご存じですか?」から始めます。多くの方は、「新聞やニュースで見たこと、聞いたことはあるけれど、どんな病気かはよくわからない。」「心臓が悪いってこと?もう、駄目ってことですか?」などのお返事をいただきます。
癌や脳梗塞、腎不全など、名前を聞いたときにイメージが沸きやすい病気は、治療を受けるときにも理解して受け入れがしやすいと思います。しかし、心不全という状態に対して診療を受ける際、患者さんにとって「わかりにくい」ということがいくつか出てくるため、問題点に挙げられます。分からないことと付き合っていくのは、不安を感じると思います。また、治療を受けていても、必要性を感じにくく、治療の中断が悪化の要因ともなります。心不全の患者さんは、症状が出なくても(私はこの状態を「心臓の負担がうまく取れていて、抑え込めている状態」と表現します)、長期的な管理を必要とします。その為、可能な範囲で理解をしてもらいながら、一緒に病気と付き合っていくことがとても大事だと考えています。
当院では、「心不全手帳」をお渡ししたり、院内で血液の心不全のマーカー(BNP)を確認できるようにし、患者さんと情報共有しながら一緒に治療を行っています。
心不全とは、「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」です。心臓は、全身に血液を送るポンプです。そのポンプ機能が低下することを、心臓が悪いと表現します。代表的な原因として
などが挙げられます。
また、心臓のポンプ機能は保たれていても、機能的に血液の循環が足りなくなることで心不全の引き金になる病気として、
などが挙げられます。
心不全の原因は、上記の様に多岐に渡ります。また、1人の患者さんに複数の原因があったりします。患者さんが「わかりにくい」と感じる原因には、心不全の原因が何なのか、患者さんが分かっていなかったり、知らされていないことにあります。心不全の原因を可能な限り明確にし、患者さんと情報共有をしながら診察を行っています。
心不全の状態になると、血液の循環が悪くなり、臓器への血流不足が生じたり、血液が停滞することで様々な症状が出てきます。
血液検査:BNP、貧血、肝機能、腎機能、電解質などの確認を行います。
BNPは心臓から分泌されるホルモンです。心臓に負担が掛かると上昇します。
当院では、院内に検査機器を設置しているため、当日確認することが可能です。
また、NT-ProBNPも外注ですが、数値を見ながら調整可能です。
引用:日本心不全学会(血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版)
心不全の治療には、「効果が目に見える治療」と「効果が目に見えない治療」の2種類があります。
利尿剤は、足、肝臓、腸管、肺の浮腫みを取ることで、息切れや倦怠感、食欲不振を改善します。また、足の浮腫みが慢性化すると、うっ滞性皮膚炎となり痛みや色素沈着となる為、予防を行います。心臓の機能が低下している方には、息切れの改善や生活の質を上げる為に、強心薬を使用します。
心不全の状態を悪化させないように、心臓の負担を取って、落ち着かせる薬です。この薬を長く続けることにより、生命予後を改善させます。この薬たちを、心臓を悪くさせないように守るという意味から、「心保護薬」と呼んでいます。患者さんにとって、心保護薬は浮腫みや息切れを改善させるような、利尿剤や強心薬のように目に見えて効果を実感できる薬とは違うため、「わかりにくい」原因の一つです。お薬の説明書きには、血圧を下げる薬、心拍数を下げる薬、糖尿病の薬など、人によっては関係が無いことが記載されている為、不安になる方もいらっしゃいます。患者さんには、必要性を説明し、相談しながら一緒に治療を行っていきます。
また、心臓の機能が落ちた方に対し、4つの心保護薬(ARNI、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬、SGLT2阻害薬)を併用すると予後改善効果が高いことが証明されています。アメリカン・コミックスのスーパーヒーローに合わせ、「ファンタスティック4」と呼ばれています。学会でも使われます。
心不全には、病状により段階があります。下のグラフの曲線の様に、加齢とともに心臓の機能は低下していきます。そして、過剰な心臓への負担は、心臓の機能を大きく落とす引き金となります。心不全が悪化した後、治療により心臓の機能を引き戻しますが、元に戻すことは難しく、以前より一段階悪い状態となります。心不全の悪化を繰り返すと、心臓の機能は低下していくため、生命予後は悪くなります。その為、心不全の状態を悪化させないように、心臓の負担を取って、落ち着かせることが、非常に重要となります。
引用:日本循環器学会(急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版))
最後に、当院では心不全で通院されている方に「心不全手帳」をお渡ししています。この手帳には、心不全の管理を行っていくための情報が、患者さんが読んでも分かるように記載されています。また、手帳の中には自宅での血圧や体重などの心不全管理に使用する情報を記載するページがあります。診察の時には、必ず持参をお願いします。